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オランダ人口の50-60%が感染というシナリオも。新型肺炎に関する現地報道から見えてきたこと

· 新型肺炎とオランダ

<この記事は2020/3/14に作成したもので、当時の状況と現在の状況は異なる可能性があります>

ドイツでは最終的に人口の60-70%が新型肺炎に感染する可能性があるとメルケル首相が発表(*1)し、イギリスでは最大で80%(*2)、政策的には60%(*3)を目指して対応がとられていると報道されています。

オランダの場合はどの辺りを想定しているのでしょうか?

現地メディアが感染症対策の当局(RIVM)の責任者とインタビューした記事(以下のリンク)によると、感染しても重症化しないケースも含め「今後数年」という単位で「オランダの人口の50-60%が感染する」シナリオを持っていることが分かりました。

その記事によると、オランダでは「すでに市中感染が広がり個別の感染ルートを追う段階ではなくなっている」ことから、これからの対応は「ウイルス感染のスピードを緩やかにすることで医療システムへの過度な負担を抑えること」がメインとなるそうです。

オランダでは2020/3/14現在、家庭医に連絡する基準も高く設定されています(下図参照。RIVMのQ&A英語版より引用)。感染の有無を確認するテストも大規模には行われていませんが、この背景には「対応リソース不足」があることを認めています。

現状のテストは結果的に「重篤な症状を示している人に限って実施」されているため、当局として把握できている感染者以外にもプラスアフファで「数百人以上の規模で感染が広がっているだろう」としています。

オランダでは風邪症状がある場合は自宅待機、可能な限りの自宅勤務、100名以上のイベントの自粛という対策が2020/3/12にルッテ首相から打ち出されました(在オランダ日本国大使館による日本語訳はこちら)。これらは「感染の広がるスピードを抑えるための措置」の一環となります。

初等教育の閉鎖は3/12時点では見送られました。このことについて市民や野党などから大きな批判が寄せられていますが、「子どもが大人への感染ルートとなることはまれ」で、学校を閉鎖する効果は「小さい」という見解を持っているためであると説明しています。

オランダの対策としては、「ウイルスを制御するために対策を小出しにしないこと」と、「社会生活にダメージを与えすぎるような方法を取らないこと」の間でバランスを見て判断していく方法が取られています。

イタリアなどで見られるような人の移動を制限するロックダウンについても「100%有効というわけではない」としていますが、罹患者や死者の増加を受けて政治的な風当たりが一層増すことが予想されます。初等教育をめぐる今後の扱いも含め、科学の知見だけではない意思決定が下され、状況が一気に変わる可能性も念頭に置いておいた方が良いかもしれません(オランダ全土の学校、飲食店、スポーツジム、チャイルドケアの閉鎖が決定(2020/3/15追記))。

なお、今回の記事では感染のピークについては書かれていません。ただ、オランダと同じような対応をとるイギリスの場合、「ピークは10~14週間後」と想定され(*4)、「数カ月続くとみられる感染拡大」を前提に対策を取っていることが分かっています(*5)。オランダがどう考えているのかは引き続き注視していく必要はあるものの、事態が悪化/長期化する可能性も十分考慮に入れて対応しておくべきと言えます。

RIVMのトップは記事の中で、「人類として、すべてのことをコントロール下におくことが残念ながらできないことを理解しなければならない」と述べています。オランダの社会環境はここ数日で大きく変化していますが、予想される罹患者数と比べればまだまだ入り口と見ることができます。今後の変化を見据えながら、自己や家族でできる対策をぜひ取っていただければと思います。

本記事の作成には細心の注意を払っていますが、内容や訳の正確性について保証するものではありません。悪しからずご了承ください。

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