• 日蘭条約を巡る近年の動きを簡単に言うとどうなりますか?

    日蘭条約の最恵国待遇を根拠にオランダ国務院(最高裁に相当)は「日本国籍保有者はスイス人と同様に扱われる」という評決を出す(2013年と2014年12月)→政府側も認めざるを得ない状況になり、2014年12月24日以降は日本国籍保有者は労働許可不要でオランダの労働市場にアクセスが可能になる→別の国籍保有者が関係する裁判で2014年12月の判例に基づいた主張が行われるようになる→オランダ政府も司法も共に苦しい立場に追い込まれる→政府の側はオランダ・スイス間の条約(日蘭条約の最恵国待遇の「素材」となっていたもの)の解釈を実質的に見直すという策を取り、「素材」の無効化を図る(2016年6月)→司法の側はかつての判断を180度覆す評決を2016年11月に出す→2017年1月から労働許可の制度が日本国籍保有者にも適用されることとなる(2014年12月24日以前の状態に戻る)→2016年11月の司法の判断について妥当性を問う裁判は2017年5月現在も進行中

     

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    2017.05.18 Lifehacker[日本版]寄稿記事

    「日本人の特権はどうなった?専門家に聞いた『オランダ移住の今』」

  • そもそも日蘭条約はどのようなものですか?

    1912年に締結された日蘭条約は、オランダと他の国が有利な条約を締結していれば、その条件を日本国籍保有者にも適用させるという「最恵国待遇」を日本国籍保有者に与えています。いわば日蘭条約は、オランダと他国が有利な条件を取り決めていればそれをオランダと日本との間にも機能させる「複製装置」です。

    日蘭条約で「日本人はスイス人と同等」に扱われると聞いたことがあります。これは何を意味しましたか?

    「複製装置」としての日蘭条約が機能するためには、複製の元となる「素材」が必要です。その「素材」の一つが、スイスとオランダ間の条約でした。その条約が「素材」となり、2014年12月24日から日本国籍保有者もスイス人同様、労働許可の取得が不要となりました。ただし、2016年にこの解釈の根拠が法的に崩れ、「日本人はスイス人と同等」という議論は成り立たなくなりました。

    2017年に日蘭条約は変更されましたか?

    日蘭条約は1912年に締結されて以降、変更されていません。「複製装置」は変わりませんが、スイス・オランダ間の条約という「素材」が2016年に使えなくなったので結果的に制度が変わった(2014年12月24日以前の状態に元に戻った)という訳です。

    2017年1月1日から労働許可の取得が再度義務付けられると聞きました。個人事業主としての在留許可は取れなくなりましたか?

    日蘭条約には別の「素材」もあります。それはアメリカ・オランダ間の条約で、自己の事業に4500ユーロ以上の出資をする起業家に特権的な滞在を保証するものです。2017年1月1日以降も「複製装置」としての日蘭条約と、このオランダ・アメリカ間の条約が「素材」として機能するので、引き続き日本国籍保有者はアメリカ人と同等の有利な条件で在留許可の取得が可能です。

    日本人の手数料をスイス人同様に安くしてほしいという裁判のせいで、労働許可の制度が復活したのですか?

    手数料に関する裁判が引き金ではないことは、手数料裁判の中で政府側の弁護士が明言しています。日本国籍保有者をスイス人同様に扱うという判決をオランダの国務院(最高裁判所に相当)が2014年12月24日に出しましたが、それがパンドラの箱となり、その後、日本以外の国籍保有者とオランダの間でより複雑な問題が発生しました。これに危機感をもった政府側が取った措置のあおりを受け日本国籍保有者に労働許可取得が再適用されるようになりました。手数料裁判で争われた争点よりももっと大きな事情が背景にあります。

    日蘭条約は個人事業にしか適用されませんか?

    日蘭条約は個人事業以外の事業形態でも適用されます。個人事業の他、個人事業主同士が一つの組織体を作るVOFや、法人(B.V.)形態でも起業・滞在が可能です。ただし法人形態を選択する場合は議決権のパーセンテージなどに注意が必要となります。

    日蘭条約に基づいて個人事業主等として在留許可を申請するメリットとは何ですか?

    個人事業主等としての在留許可申請の場合、通常であればオランダ経済への貢献がポイントシステムによって審査されますが、日蘭条約の効果で複雑な審査が免除されます。また、家族の再会(呼び寄せ)も保証されています。

    日蘭条約は個人事業主用というイメージがありますが、法人進出にも利用できますか?

    法人の大小を問わず進出時に利用可能ですが、オランダに滞在する方は現地法人の株主兼経営者として25%以上の株を保有するなどの条件を満たす必要があります。